第3回 possible and impossible 98.5

入手可能CD

高橋洋子『9月の卒業』から「ゆらめいて」
KITTY KC-0058 (93.8.25)

アンケートなどで、「やりたいことだけをやってください」と書いてあると、心にチクッと来ます。実は、思い通りにやりたい放題、妥協せずに出来るチャンスなんて、今まで片手で数える程しかないのです。何故なら、他の人の意見や演奏を尊重しなければいけないから。無視してはいけないから。

    そもそも僕に編曲の仕事を任せる人は、もう誰もいなくなったけど、これが最後の編曲の仕事だったかしら。編曲(アレンジャー)てのは、料理人に似ているとも言え るけど、大前提として、メロディーと歌詞と声の方が偉い。それが、どんなに腐っていてつまらなくても、それを使わなければいけない。

この人は歌がウマイ。メロディーはシンコペが充分にあって、コードはちょこまか動かない。編曲家としてはとても嬉しい素材。サンプリングループを4つぐらい組み合わせ、シンセはT3とプロテウスワールドだけ。Bassは3パターン作ったけど、Aメロはバッサリとカット。頭と最後にヘリコプターの音を16分音符に合わせ、間奏は迷った末、ヴァイオリンを外部に発注。名前忘れたけど、彼はこのオケを褒めてくれた。ノリノリで僕の思い通り以上のsoloを弾いてくれましたよ。エンジニアの人もノリノリでやってくれたけど、ひとつ残念なのはTDに立ち合えなかったこと。「コード感なくてもOKだよね」と言ってたのに、ガイドとして入れた白玉 Bell-Pad シンセが入ってるよなー。

高橋洋子さんは、その後エヴァンゲリオンで大ヒット。昨年夏、野外の大イベントで杏子さんと一緒になった時、僕のこと覚えていてくれた。昔の陽気な娘さんは、静かな女性になってました。

ところで、この曲…メトロファン向きではないかもしれません。ので悪しからず。


入手不可能LP

あがた森魚『永遠の遠国』3枚組

永遠製菓 AAE-1001〜1003  (1985.10)

これも編曲もの。3枚組のうち1枚分を、まるごと任せてくれました。これがなかったら今の僕はない。というより音楽家を諦めて違う生活をしていたかもしれない。つまりこの1枚で、自分のことをひょっとしたら天才なのかしらと思ってしまったので、今もこうしてまたいつか天才の仕事をしたいとダラダラやってる次第なのです。

特に、スターカッスル組曲は、素材としては4小節が2個。それを片面20分以上使える。燃えたぜ。当時シンセは、発展途上だったゆえ、逆にフリーキーな使い方もできた。なにせアナログだったもんね。MIDIはまだ無くて、シーケンサーも使っていない。今じゃ子供のおもちゃにも付いてるデジタルリバーブも、当時数百万円。そして世界初のドラムマシーンLINNが、キティレコードにあったので、初めて使った。今の僕は、打ち込みで、リアルなドラムのシュミレーションを作ることは、もうやらないけど、当時は燃えた。808も使った。というより、ギャラのかわりに、808購入のお金を、半分出してもらった。話は尽きないが、各曲のコメントを当時書いた物があるので、またお見せする機会があるかもしれない。

CD化されるといいねえ。

あがたさん、ビッグチャンスをどうも有難う。また誰か僕に全部まかせてくれないかしら。一ヵ月で、月収15万で、アルバム一枚分作りまっせ。いや、ちょっとそれじゃ安すぎるかしら…。        98.5.1