■俺さま祭り(SMEインターメディア RaL-9801)¥3,150(税込価格)

1.俺さま祭り
オイラはオイラの祭りの太鼓のバチをとる。アンタはアンタの祭りの舞を舞え。役者バカ一代、尊敬する先達たちがあいついで鬼籍に入っていく。ヨタロウは勝新に、そして中間部では横川タダヒコが山茶花九にリスペクトを捧げつつ、往年の赤塚不二夫的キャラの“クーダラナイ”コーラス隊が祭りを盛り上げていく。「こんな曲最初に持ってきて、おまけにアルバム・タイトルだなんて。まったく何様のつもり!?」 「俺様」 「‥‥」おあとがよろしいようで。

2.東京UNDERGROUND
映画とルポルタージュ、どちらも話題を呼んだ「アンダーグラウンド」、地層をくぐっていく恍惚と不安は都市につきものだ。文明は空に浮かび、地に潜る。ゲットーは意外に近い。この曲をかけながら深夜の首都高をブッ飛ばしていただきたい。しかし、これだけメトロだ、アンダーグラウンドだと言っているのだから営団地下鉄から何かオファーがあってもばちは当たるまい。でも都営はいやだ、高いから。

3.夜のポストリュード
あと一歩のところ‥‥‥ 一歩手前でやめ、そこに無限のはたらきを残し、天地自然、神、宇宙、とにかく人間のはかり知れない大きな手にゆだねるという水墨家のおばあさんの言葉にいたく感銘して書き始めた。で、夜のポストリュード。なんのことはない。夜明けの歌であるが、朝は加速度的に目覚めていく。通勤の人々が早足で歩いてたり、バスを待ってたりする横の植え込みで眠ってたり、酔っ払ってたりするのも最近はあまりしてないな。シングルとはテイク違いのなまヴォイス。みうらじゅん以降の日本におけるディラン像がここに?『吉祥天女』のブディズムに対し、ここでは埴輪のジャポン。別れを告げる舞台となる駅はどこにある?

4.のるかそるかPOLKa
東京よっぱらい事情。これをポルカで乗り切れとは、俺たちメトロもご無体な。曲終盤へ向かう男どものスイング感が強すぎて、二丁目のオアネェさんもつい「ごめんなさい」とは・・・。『ままよ、さばさーれ』〔「風狂伝」〕の流れをくんで、、またまたクレイジー・キャッツ色が顔を出す。誰が犬塚弘やねん。ちなみに最近カルメン・マキさん(!)とご一緒したライオン・メリイさんは、十数年前のメトロを見ている彼女に「最近はポルカ・バンドです」とさわやかに説明したそうだ。(にが笑い)

5.へなちょこBLUE
どこまでも正統的なバラード。スタジオの片隅でMr.俺様祭は「今度書く曲はリチャード・マニュエル(注)のように歌いたい」と吐息まじりにつぶやいた。ソプラノ・サックスがなだめ、アコーディオンが泣かせ、オートハープが心をかきむしる。心の置き所は、やさしいボッシのスネア・ロールに。

6.たまらん節
TEX-MEXな埃りとエンジン音をまきちらせながら、今回大活躍の玄ちゃんが甘いテノールで飛ばす軽快なナンバー。楽器総出演で田村玄一歌手デビューを寿ぐハズが、最後はお約束の“たまらん”コーラス。(当然BassのGUNの発案です) この軽さがたまらんらんたまたまらんらん。さぁご一緒に。なお当楽隊ではメキシコ風求愛を彼女の窓辺で演奏する出張演奏サーヴィス承ります。(MF事業部)

7.聖珠
短く穏やかなインストゥルメンタルでも心はゲンスブール。恋人たちの囁きかわす夢に遠くからスティール・パンの祝福を。恋を失ったあなたには、ギターのミスタッチを。

8.吉祥天女
決定的に濃いこの曲にすばらしいダメ押しをしたのは、天女か?魔女か?その声も麗しき戸川純さま。おなじみメリイのタブラに隠し味の四家くんのチェロも、高級感を高めている。だもんで某チェーン店の居酒屋で働く娘の瞳を見て「そはまさに吉祥天女か観音か」とうちふるえた男がいたことは口が裂けても言えまい。

9.ほーせんかぱん!
期せずして少女漫画タイトル二連発。ともに内容は全く関係なくて、こちらは確かイングマル・ベルイマン監督(注)の映画の中のひとつの台詞にインスパイアされて書き始めたものです。メリイさんによるこの曲はリズムワクワク、同じ過去の回顧でもほうせんか、夕焼け、血の赤で命が息づいている。生きていく私、泡のような日々にふとあでやかな鈴木清順(注)の赤を見る。そして二人の女性作家に大いなる敬意を。

10.消えゆく男達
メトロのスゴ腕ゴールキーパー、ボッシの手によるこの曲は、ヨタロウ以外の詩としても初の試みだが、前作の『さまよえる楽隊』が立ち去ったあとの寂寥感と男の匂いを漂わせている。人生の夢と希望、失意と諦念がここに。荒ぶる心はオルガンのレズリー・トーンにゆだねよう。そのスッピンの声はリアルな労働者を想起させよう。今日のつらい仕事が未来につながっていた時代はどこへ行ったか。 

11.PIGENONWING
バリトン・サックスのバネの上で高々とジャンプ。飛ぶのが怖くても、すでに浮かんでいる。ロック男たちの人力テクノの上で、ゆらり地上から7mから18m、人の家をちょっと盗み見しながら時に屋根で休んで、ホラ、キーボードが虹を描いている。これぐらいの宙空が心地よい。ここに来て漂うGUNの声、次回は今回歌わなかった人達の声をお聴かせしやしょうと予告して大団円。

12.米の歌
役者としても活動しているヨタロウが、もともと芝居のために書き下ろした曲。木津さんら民謡コーラスの参加や生ストリングスの導入は、今までのメトロの殻を打ち破る画期的な試み。イントロとアウトロ、そして歌とミックスがシングルとは違うこのロング・ヴァージョンは、より広い世界が展開される。見えるのは70年代からずれこんだパラレル・ワールドの日本か?'98 2月〜3月NHK「みんなのうた」放送曲。次はどなたか「NHKのど自慢」で歌っていただけませんか?

 

リチャード・マニュエル 〔注〕ザ・バンドのピアノ&ヴォーカル。解散後しばらくして自殺。

イングマル・ベルイマン監督 (注)スウェーデンの映画監督。「野いちご」「処女の泉」等。神や悪魔や生と死をテーマにした作品が多いが、女性関係も多い。


かえる?
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